うそつきチッピとパンやのエマちゃん誕生秘話
私のいちばん小さなお友達「エマちゃん」のお誕生日が近いことを知ったのは夏の終わりです。ちょうど無印良品で見かけた「画用紙絵本」という商品をなんの気なしに買ったあとでしたから、ここはひとつエマちゃんを主人公にしたお話を作って贈ろうと考えました。週末の7時間、制作に没頭し、できたのが「うそつきチッピとパンやのエマちゃん」です。
本物の絵本ができたと自負しています。
古ぼけた万年筆と汚れたクレパス、390円の画用紙絵本に、主婦の発想をにわか仕立てにかけ合わせたものを、本物と呼ぶなんて恥ずかしいことだと知っていますが、やはりそう思っています。
今の社会でみんなが「本物」と同意するのは、世の中の子どもたちのためになるようにメルヘンな世界をプロの画力で描き出し、常識的な倫理をもとになにかの教訓にもなりえる物語、こういったものでしょう。
そんな「本物」に反して私は、世の中の子どもたちのことは一切考えていません。私は、大好きなエマちゃんひとりのことを考えていました。
エマちゃんを主人公にして、彼女にとっての現実に、私が今までの人生で得てきたさまざまな発想をかけ合わせて物語にしました。
絵本をとおしてなにも教える気はなかったけれど、読み返してみると、常識とは関係ないところでの私なりの倫理、エマちゃんに伝えたいことが織り込まれていることに気づきます。
「善も悪も本来は、裁けない。悪人はいない。簡単に線引きをし、悪とすべきではない。排斥ではなく、共存を。それではどうやって。」簡単に落としどころをつけられないものに、無理やり落としどころをつけて一件落着としない、簡単ではないあり方というのが織り込まれているようです。
かけがえのない誰かひとりを思い、発想を遊ばせ、自分なりの世界にのせて大切なメッセージを伝える。私はこれのみ、本物だと思います。
「人類のために」は嘘で、「あなたのために」が本物です。
こういう仕事を、今後もしていきたいなと強く思います。つまり誰にでもできる仕事です。390円あれば。
もしくは、廃材でだって出来ますから、ゼロ円でできます。
創作とは本来そんなものです。

エマちゃん、お誕生日おめでとう!あなたのもとに、これからもたくさんの幸せが訪れますように。